(story) オニオングラタンスープ | 軽井沢で美穂の時つむぎ

(story) オニオングラタンスープ

今日は久しぶりに彼に逢える。
ずっと忙しかったから彼の大好物を作って待っていよう。
私が来るようになって、少しずつ増えて行く台所用品。
さて、この大量の玉ねぎの皮をむきましょう。
二人分にしては多いだろうって?いえいえ、そんなことはありません。
魔法のように消えてなくなっちゃうんだから・・・
まな板の上の玉ねぎをスライス。
どんどん切ってたまねぎスライスの山ができちゃった。
このスライスたまねぎをバターで死ぬほど炒めるんだ。
焦がさないように丁寧に・・弱過ぎてもだめ・・
ずっと前、レストランであなたが今までで一番美味しそうに食べていたわ。
食べるの早いのに、このスープだけは大事そうに少しずつ口に運んでいたわね。
「家の母親、仕事していたし、外国の料理みたいな気のきいたもんなんか作れなかったから、初めてこのスープを飲んだ時、あまりのうまさに思わずもう一杯注文しちゃったんだよ。。できればバケツで飲みたいくらいだ。。」
バケツはオーバーだろうけど、ほら、こんなに大きなキャセロールを用意したわ。
あなたの驚く顔と喜ぶ顔、見たいから。
今日はお誕生日でも記念日でもないけど、こんな日があってもいいでしょ?
永遠に続くような玉ねぎを炒める作業だって、あなたとの今までを思い出しながらやったらあっというまだわ。
おまじないのように、おしいくなぁ~れ、おいしくなぁ~れって唱えながら炒めましょう。
ほらほら・・お山のようだったたまねぎがこんなに少なくなっちゃった。
白かったのに、今はこんがり狐色通り越して、あら、狸色!
粘りも出て・・さてさて、そろそろ白ワインの登場♪
とくとくとそそぐとほわぁ~~っといい香りがお部屋の中に漂い始めたわ。
そこにブイヨンを入れて、コトコトと煮ましょうか。
煮る作業はお鍋にまかせて、その間にサラダの用意。
サラダは素材をいかしたグリーンサラダ。
そしてもう一品!あなたの好物のバジルのスパゲッティを用意しましょうね。
キャセロールにスープを注いで、フランスパンを浮かべて・・粉チーズをふりかけて・・オーブントースターの中でちょっと待っててね。
なんだか、本当に何かの記念日になりそうな御馳走になっちゃったわ。

彼が帰るまでもう少し・・・・

スパゲッティのお湯を沸かしている間にテーブルメーキング。
お風呂にもお湯を張っておきましょうね。
もうすぐ彼が帰ってくる・・・
もうすぐ彼が帰ってくる・・・

今日は久しぶりにアイツに逢える。
ここんとこ忙しかったからな。アイツにも寂しい思いをさせっちゃった。
やっと一段落ついたから、外で飯でもって言ったのに、アイツ、家がいい、なんて。
どうしちゃったんだ?
デートがしたい、恋人同志みたいなデートがしたい、って言っていたのに折角時間ができたのに、家がいい、なんて・・おかしなヤツだ。
しかし、日付が変わる前に家につくなんて、久しぶりだなぁ~
俺を迎える街の灯り、コンビニだけだったもんなぁ。
あんなところにケーキ屋ができてる。
アイツ、ケーキ好きだから、ケーキでも買って帰るか。
しかし、野郎がケーキを2個ばっか買うのも照れるけど、今日は特別だ。
あはは。。なんかの記念日みたいだな・・
アイツ、何かって言うと未だに「今日は初めて会った日、だの初めてデートした日」だなんて言うもんなぁ~
今日は・・・わかんねぇけど、まぁいい。。
ちったあ文句、言いながらも俺に合わせてくれていたからな。
アイツのことだから、チャイムを鳴らしたらきっと玄関に走ってくるぞ。
そんなこと、したことないけど、抱きしめてキスをしよう。
今日の俺。。ちょっと外人みてぇだな・・
でも、そんな気分だ。
アイツを抱きしめて、キスをしよう。

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